近年話題の「脳腸相関」

腸は「第二の脳」といわれ、独自の神経ネットワークにより脳から独立して働くこともできると言われています。そして近年、脳と腸は相互に密接な影響を及ぼしていることが分かってきており、腸内細菌と脳の関連も一層注目されています。

脳と腸が自律神経などを介して密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」

腸は脳の指令がなくても消化活動など独自に動くことができる器官ですが、腸と脳は自律神経系や、ホルモンやサイトカインなどの液性因子を介して密接に関連しています。この双方向的な関連性を指して「脳腸相関」といいます。
たとえば、ストレスを感じるとお腹の調子が悪くなることがよくあります。これはストレス刺激によって誘発されたストレスホルモンが胃腸の働きを乱すことが原因です。反対に、胃腸の調子が悪いと、その情報は脳に伝わり、腹痛や腹部の不快感とともに抑うつや不安などの情動の変化も引き起こすことが知られています。
近年、腸内細菌も脳の働きに影響を及ぼすという研究が注目を集めており、「脳-腸-腸内細菌軸」という概念も提唱されています。

アルツハイマー病の発症・進行と腸内細菌の関連性に注目

脳腸相関に関する論文数は著しく増加しており、精力的に研究されていることが分かります。最近ではアルツハイマー病の発症・進行に対する腸内細菌の関連も指摘され、注目されています。
アルツハイマー病の原因ともいわれるアミロイドβの蓄積に、腸内細菌が関係していることを示唆する研究結果があります。また、アルツハイマー病患者の腸内細菌は健常者に比べて多様性が低く、ビフィズス菌の占有率が低いという報告もあります。良好な腸内環境を保つことは認知症予防に寄与する可能性があるのです。

論文検索サイト「PubMed」における
「Gut Brain Axis」に関する論文数の推移

(2020年11月時点)

腸内細菌とアルツハイマー病の関係

腸内細菌がアルツハイマー病の原因となるアミロイドβの蓄積に関係していることが示唆された。

出典:Harach et al.,Scientific Repors, 2017

健常者と比べ、アルツハイマー病患者(AD)の腸内細菌は多様性が低く、腸内細菌の構成にも違いがあり、ビフィズス菌の占有率が低かった。

出典:Vogt et al.,Scientifc Reports, 2017

ビフィズス菌MCC1274

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