近年、腸内細菌と全身の健康が密接に関連していることが明らかになっており、腸内細菌を含めた腸と脳の機能連関を意味する脳腸相関が注目されています。アルツハイマー型認知症は発症の数十年前から徐々に進行し、一度発症すると回復が困難です。そのため、生活習慣の改善など日々の生活の中で実践できる有効な予防対策を見出すことが課題となっています。
研究1アルツハイマー型認知症を抑制する可能性がある菌株の特定に成功
予防及び進行抑制効果のある素材の探索
アルツハイマー型認知症の発症を
抑制する可能性がある菌株の特定に成功
アルツハイマー型認知症の原因物質と考えられているアミロイドβを投与し、ビフィズス菌MCC1274(10億個/日)を10日間にわたり経口摂取したプレ臨床試験では、認知症処方薬と同等の認知機能改善作用があることが分かりました。また、アルツハイマー型認知症では脳に慢性的な炎症反応が起きているといわれていますが、本試験ではビフィズス菌の摂取によって脳内の過剰な免疫反応や炎症に関連する遺伝子の発現が抑えられました。これらの結果から、ビフィズス菌MCC1274摂取がアルツハイマー型認知症の発症や認知機能の低下を抑制する可能性が示唆されました。
軽度認知障害の人を対象に認知機能改善作用を確認
予備試験として、軽度認知障害(MCI)の可能性が高い高齢者を対象に、ビフィズス菌MCC1274(200億個/日)を摂取してもらい、認知機能評価検査(ミニメンタルステート検査:MMSE)による変化を検証しました。その結果、摂取16週後と24週後に、認知機能の有意な上昇が認められました。
「MMSE」とは
認知機能を比較的簡便に評価できる聞き取り式質問票で、認知症のスクリーニングや診断の補助として広く活用されている。30点満点にて評価され、得点が低いほど認知機能障害を有する可能性が高い。本研究では22点から26点を「軽度認知障害の疑いがある」とした。
二重盲検対照試験でも認知機能改善作用を確認
さらに、もの忘れが気になる高齢者を対象に、ビフィズス菌MCC1274(200億個/日)を摂取してもらい、RBANSおよびMMSEによる認知機能評価の変化を検証しました。その結果、ビフィズス菌MCC1274摂取群ではプラセボ群に比べ、認知機能が低下した対象者においてRBANSにおける即時記憶スコアとMMSE総合スコアの有意な改善が見られました。
「RBANS」とは
認知機能を評価する検査の一つ。認知領域ごとに評価することが出来る12の下位検査を行い、それぞれの評価している機能から、認知領域を測定する指標得点を算出する。