活動報告

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道川教授による論文が公開されました

当機構の世話人である道川らによって、ビフィズス菌 MCC1274 の作用機序に関する研究論文が、アルツハイマー病研究の専門誌である「Journal of Alzheimer’s Disease」に2022年2月15日付けで掲載されました。(J Alzheimer’s Dis, 85: (2022) 1555ー1571)
今回は、その研究論文の概要をご紹介いたします。

アルツハイマー型認知症の主な原因とされる「アミロイドβ」ですが、そのアミロイドβの元となるのが細胞膜上に存在しているAPP(アミロイド前駆タンパク質)というタンパク質です。

APPは、通常は神経の成長や修復などを担う多機能タンパク質であるとする報告があります。αセクレターゼ(ADAM10)とγセクレターゼというタンパク質分解酵素で分解されると、毒性のあるアミロイドβは産生されません。

一方、老化など何らかの原因により、βセクレターゼ(BACE1)とγセクレターゼというタンパク質分解酵素で分解されるようになると、毒性の高いアミロイドβが産生され、これらが凝集・沈着し、老人斑が形成されます。

つまり、αセクレターゼ(ADAM10)βセクレターゼ(BACE1)のどちらのタンパク質分解酵素が働くかによって、脳のゴミとなるアミロイドβが発生するかどうかが決まってくる、と言えます。

実際に、ビフィズス菌MCC1274を摂取したモデルの海馬において、αセクレターゼ(ADAM10)および、αセクレターゼがAPPを分解してできるsAPPαとCTFαが増加していることから、αセクレターゼが優勢に作用していることが分かりました。

また、アミロイドβの沈着も抑制されているという結果が得られました。

さらに、ビフィズス菌MCC1274を摂取したモデルの海馬においては、ミクログリアの活性化が抑えられている(=脳内の炎症状態が抑えられている)という結果が得られました。

※ミクログリア:脳内の免疫系を担う細胞集団で、過度に活性化されると、炎症性サイトカインの分泌によって神経細胞にダメージを与えてしまいます。
※炎症性サイトカイン:主に免疫系細胞から分泌される、炎症を促進するシグナル伝達物質。

同様に、海馬において炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6)の産生が抑制され、逆に抗炎症性サイトカイン(TGF-β)の産生が亢進される、(=脳内の炎症状態が抑えられている)という結果が得られています。

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