認知症の発症には生活習慣の関与が小さくないことが指摘されており、予防策としても推奨されています。食や栄養についても、確定的な要素はまだ解明されていないものの多くの報告があり、今後のさらなる研究の進展が待たれます。
WHOでは地中海食を推奨
WHOの認知機能低下および認知症リスク低減のガイドラインでは、「健康的な食事が認知障害を予防する可能性は大きい」と述べられています。グローバルな認知症疫学調査においては、認知症のリスクを低減させる食事として「地中海食」が挙げられています。地中海食は軽度認知障害やアルツハイマー病のリスクを低減させ、健常者においては「良好なエピソード記憶や全般的な認知機能と関連していた」とする報告を紹介しています。
なお、日本版においては「食文化が異なる日本では地中海食を取り入れるのは難しく、バランスのとれた食生活を心がけるのが望ましい」と付記されています。
日本の疫学研究では大豆・野菜・海藻・乳製品が認知症予防因子に
日本における大規模介入研究としてよく知られるのが、福岡県久山町で50年以上にわたり継続して行われている生活習慣病の疫学調査、「久山町研究」です。
この研究における認知症のリスクと食事についての報告では、大豆や大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、海藻類、牛乳・乳製品の摂取が多く、米の摂取が少ない食事パターンが認知症のリスクを軽減するとされています。減らすと良いとされた米の摂取量と認知症発症とのあいだに明らかな相関関係は認められておらず、一定の摂取カロリーの中で米を食べ過ぎると他の食品のバランスが崩れることが影響しているのではないかと仮説が立てられています。
上記に挙げた「認知症予防のための食事パターン」をスコア化してみると、この食事パターンの傾向が強いほど認知症の発症リスクが有意に低下します。
他にも認知症と食事、栄養に関しては多くの報告があります。日本神経学会による「認知症診療ガイドライン」では炭水化物を主とする高カロリー食や低タンパク食および低脂肪食は、MCI(軽度認知障害)や認知症のリスクを高める傾向にあると述べています。しかし個々の栄養素では確定的なエビデンスは得られておらず、今後の研究の進展が待たれます。