講演①「ビフィズス菌MCC1274の認知機能改善効果」/ 清水 金忠 (森永乳業株式会社 研究本部 基礎研究所長)

ビフィズス菌MCC1274のRCT試験における認知機能改善効果

世界で注目される腸内細菌研究

 今、世界中で腸内細菌に関する研究が進んでおり、論文数が約20年間で約50倍となるなど大変注目もされています。我々の腸内に住む腸内細菌は、約数百種類、数は40兆個と言われており、様々な疾患と密接に関わっていることが研究で明らかになってきました。また腸内細菌は様々な要因(年齢、食事、ストレス、運動など)で変化するものであり、裏を返せば制御できるものとも言えるため、腸内フローラの制御を介した健康維持への期待は大きくなっています。

腸内細菌と脳の関連性「脳腸相関」について

 腸内細菌研究のホットトピックとして脳と腸が自律神経を通じて影響を与え合う「脳腸相関」があり、特に腸内細菌と脳との関連性が注目を集めています。また、アルツハイマー型認知症と腸内細菌の関連についても、沢山の研究成果が発表されています。例えば、動物実験においては、通常のマウスよりもお腹に腸内細菌がすんでいない無菌マウスの方が、脳内におけるアミロイドβの蓄積が少ないという研究結果や、ヒトでも、アルツハイマー型認知症患者と健常者の腸内フローラの構成が異なり、アルツハイマー型認知症患者の方が腸内のビフィズス菌の割合が少ないという結果などがあり、腸内細菌が認知症の発症と関連することが示唆されています。しかしながら、因果関係の証明には至っていないという現状であります。

ビフィズス菌MCC1274の認知機能改善効果

 森永乳業では、認知症という社会課題に対して、食品会社としてできることはないかという思いから、約10年前より認知症の予防及び進行抑制効果のある素材の探索を始め、「ビフィズス菌MCC1274」を特定しました。MCI(軽度認知障害)の疑いが高い方を対象としたヒトへの予備臨床試験(オープン試験)で、ビフィズス菌MCC1274での継続摂取による認知機能の改善がみられたことから、続いて二重盲検プラセボ対照群間比較(RCT)試験で対象者を物忘れが気になる方に拡大し実施したところ、全体解析では有意差がみられなかったものの、認知機能が低下したサブグループ解析で、ビフィズス菌MCC1274摂取による認知機能の改善の可能性が示されました。そこで、MCIが疑われる方を含む健常者80名を対象としたRCT試験を再度実施したところ、ビフィズス菌MCC1274摂取群はプラセボ群と比較して、RBANS(神経心理検査)における即時記憶、視空間・構成、遅延記憶など、認知機能の顕著な改善がみられました。また、認知機能の改善は血中炎症マーカー(HbA1c)の変動との有意な相関も確認されました。

ビフィズス菌MCC1274は、国際的なアルツハイマー病の最大の情報サイト「ALZFORUM」に紹介されている唯一のプロバイオティクス素材です。今後も未病段階から認知症発症者にまで様々な寄与ができる可能性や作用機序の解析の研究を続けていきます。

森永乳業株式会社
研究本部 基礎研究 所長
清水 金忠

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