基調講演「脳寿命を延ばす いまの状態を把握し、対策を考える」/ 新井 平伊 (アルツクリニック東京院長、順天堂大学医学部名誉教授)

脳の老化サインについて

認知症を疑う場合、従来では認知症か健常者かという二分法での診断が主流でした。しかし最近では、認知症の前段階である未病段階として MCI (軽度認知障害)、その更に前段階である SCD (主観的認知機能低下)に、健常者を加えた四分法での診断や、未病段階での予防の重要性が分かってきました。また認知症の 7 割を占めるアルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβの蓄積は、未病段階の 40 代から始まり、15~20 年掛けて徐々に脳の老化のサインがみられます。認知機能 の低下がはじまる脳の萎縮が起きた時には、すでに発症一歩手前であり、だからこそ病気が発症する前にその予兆を発見し、未病段階から早期介入する先制医療が重要です。
脳寿命を延ばすための認知症予防対策としては、生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満、歯周病)の改善や、脳の活性化につながる対人ゲーム、体と頭を同時に動かせるような運動、質の良い睡眠、バランスの良い食事などの方法があります。薬に頼るよりも普段の食事などで予防につながる環境をつくっていくこと、サプリメントや健康食品を使用する場合は十分にエビデンスのあるものを選ぶことが重要になってきます。
アルツクリニック東京では、アルツハイマー病の発症リスクを検出できる唯一の検査であるアミロイド PET による発症リスクの早期発見を行っています。また先制医療の発症予防活動を楽しんで実践できる場である「健脳カフェ」の運営にも取り組んでおり、当機構と共にMCI 段階などへの早期介入ができる社会を目指していきます。

40代からの認知症リスク低減機構 代表世話人
アルツクリニック東京 院長/順天堂大学名誉教授
新井 平伊

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