講演②「ビフィズス菌 MCC1274 の認知機能改善効果と商品化に向けて」/ 清水 金忠 (森永乳業株式会社 研究本部 基礎研究所長)

脳の老化サインについて

森永乳業は、1969年の「ビフィズス菌 BB536」の発見以来、50 年以上にわたりビフィズス菌の研究を行っています。ビフィズス菌は、主にヒトや動物の大腸にすんでいる細菌です。腸内環境を整えて様々な病気を予防する作用がありますが、乳児のときをピークに加齢とともに減少してしまいます。またビフィズス菌は乳酸菌の仲間ではなく、生物学的な分類においても、例えるなら人間とナマコくらい異なります。主な差異として、代謝産物では乳酸だけでなく、短鎖脂肪酸の1つである酢酸も作る点が大きな違いとな っています。大腸の腸管内で作られた酢酸は、有害菌の増殖抑制など健康にとって様々な働きをしてくれます。酢酸というとお酢をイメージされる方も多いと思いますが、酢酸を口から摂取しても小腸で吸収されてしまい、大腸にはほとんど届かないことが分かっており、ビフィズス菌のように大腸の中で酢酸を作り出す腸内細菌の活性化が重要となります。
森永乳業では、ビフィズス菌研究の更なる取り組みとして、アルツハイマー型認知症の発症を抑制する可能性のある菌株「ビフィズス菌 MCC1274」の特定に成功しました。また MCI(軽度認知障害)の疑いがある方を含む 50 歳以上 80 歳未満の 80 名を対象にした臨床試験の結果、ビフィズス菌 MCC1274 の摂取により、主要評価項目である「RBANS 神経心理テスト(認知機能がどの程度低下しているか評価する検査)」でプラセボ群と比較して有意な改善が確認され、副次評価項目である「あたまの健康チェック(神経心理学検査)」でも改善が見られたことから、ビフィズス菌 MCC1274 に認知機能の維持・改善効果があることが示唆されました。また国際的なアルツハイマー病の最大の情報サイト「ALZFORUM」に紹介された唯一のプロバイオティクス素材として世界から注目をされており、今後も未病段階から認知症まで様々な有効性や作用機序の解析の研究を続けていきます。
現在、認知機能市場(「認知機能」「記憶力」に関する機能性表示食品)が活発となっており、各社様々な関与成分がありますが、菌体を関与成分とするものは、森永乳業が届出・受理されたビフィズス菌 MCC1274 が初であり、今後社会課題の解決に対してビフィズス菌 MCC1274 が貢献できるよう商品開発・研究を進めていきます。

森永乳業株式会社
研究本部 基礎研究 所長
清水 金忠

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